Column(コラム)
職人とつくる木の住まい
 
隠居屋として明治初期に建てられた祖父母の家    
 
祖父母の家によく泊りに行った子供のころ。
商家の住まいは4枚引き分けの障子を開けると板の間を挟み、お客さんが出入りする店先に出ます。暑い季節は小障子を外し、寒い季節は障子を取り付ける大阪格子が座敷周りを囲んでいます。
お得意さんは庭を通り、縁側から顔を出します。日本の風土や文化で育まれてきた伝統家屋は四季折々に咲く草花を愛でたり、年中行事やお祝いごとなどを座敷で行ったり、多くの親しい人が出入りできるような外に開放された設えになっています。
建具を外すと宴会の場に。室内環境を居心地の良いものにするために建具が部屋の仕切りとして大事な役割を担って居ます。
使われている木は地元の持ち山で葉枯らしから製材天然乾燥を10年〜30年かけて行なったものだと聞いています。
敷居は胡桃、柱や梁は欅や栗や松、面材には欅が使われて居ます。
残念ながら、こうした住まいは年々変わりつつある建築基準法やコスト、周辺の環境のこともあり、建てることは難しくなっていますが先人からの住まいの知恵には学ぶべきことが沢山あります。
全く新しいものに関しては、これから10年先、30年先、50年先の結果が見えて来ないと何とも言えない部分があります。それは100年前に建てられた住まいでも建築当初は同じことですが、日本独自の風土で100年超えて長く持ち堪えてきた家屋で変わらないものは、建築材として優れている良質な木とそれを適切に扱うことができる職人や知恵を持った人達によって建てられた住まいであると言えます。
「家庭」という言葉は「家」と「庭」両方が成り立たないと住まいではないと言ったのは、今は亡き祖父。
 
当時、日本橋にあった祖母の住まい(中)は建具で時代が判別できます。
木の生い立ちと建築現場から
本来、人にとって自然で居心地よい状態で居られるのはどんなところでしょうか?
自然の恩恵を受けることで、生命が誕生し共生してきました。
木の持つぬくもりや、木の持つ生命の力強さを感じることができる場所があります。土場もそのひとつで山から下ろしてきた色々な樹種の木が山積になっています。よーく見ると、種がこぼれたのでしょう。新しい命を見ることもできます。
こうした木を使う現場は、材木の良い香りに包まれます。実際に、人工乾燥された材や外材とは違う香りがしますので建て主さんの中には驚かれる方もいらっしゃいます。
 
【写真は桧葉】これから先200年持続を目指し3寸角の材を床組みに
 
 【写真は楢】山から下ろしてきた丸太を保管しておく土場には新しい生命も宿ります
 
 
 
 
 
 【写真は木曾にある土馬】山から下ろしてきた丸太を保管しておく場所
 
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